モール

  • 発行:赤々舎
  • 仕様:226×182 ㎜ / 116ページ / 上製本/
  • デザイン:グルーヴィジョンズ
  • 定価:3,000円+税
  • Published in January 2022

モールの風景を捉えることは、変化していく日本の風景を見つめ、そこで生きる私たちの生活や在り方を問いかけることになるのではないか──小野は2010年代に入り、モールの撮影を本格的に継続します。
人の欲望やそれぞれの差異を覆い隠す、巨大な箱のような外観。その中に登場する人々の、日常と地続きでありながら少し浮遊するような振る舞い。ひとつの街でもあるモールは、地元の風景にどのように接続し、見え隠れするのか。
そして時間の経過によって廃墟となるモールも現れ、しかし今日もどこかで建設が進む現場。
本書は、人々の共通体験となったモールを記録し、その内側と外側から、社会の循環と人の営みを見ようとする試みです。

誰もの生活の背景として建っているモールからどのような物語を見出すか。日常、非日常、町でない町。日本人の共通体験の舞台。切り取るべきテーマはなにか。ショッピングモールの写真集を見てみたいという思いを昔から抱いていた。それが実現したことを喜びたい。
―――― 速水健朗(編集者/ライター)

写真集として見るモールも、さまざまな表情を見せてくれて心が躍る。そしてアニメ作りのため何百枚とモールの写真を撮った自分としては、個人的なシンパシーを感じてしまうのだ。
―――― イシグロキョウヘイ(アニメーション監督、演出家)

男子部屋の記録

  • 発行:玄光社
  • 仕様:246×184 ㎜ / 160ページ / 並製本
  • デザイン:川名潤
  • 定価:2,300円+税
  • Published in May 2019

現代の、都会の男子とその部屋。

気鋭の写真家・小野啓による現代の、都会の男子とその部屋、そこに在る物たちのなるべく詳細な記録。3年にわたって撮影された、90人の男子たちのポートレートとその超プライベートな空間。著者初の試みとして、それぞれの人物と対話し、書き下ろしたテキストが付記されている。

男子部屋には収まりきらない物語があふれていて、まだ書かれていない物語が散らかった床のうえで叫んでいる、それは人生よりもっと小説に似ている。ここにはまるで時間がねじ込まれているみたいに、部屋に刻まれた複数の時が写り込んでいて、ぼくはこの写真集に写り込んでいるものこそが、「物語」なんだ! と自信をもっていいたい。
―――― 町屋良平(小説家)

暗闇から手をのばせ

  • 発行:silverbooks
  • 仕様:190×150 ㎜ / 512ページ / 並製本
  • デザイン:森大志郎
  • 定価:4,500円+税
  • Published in November 2017

カメラを持ち、ともに命を削るように。 終焉へと向かうエネルギーの渦に飲み込まれていく…

10年間日本全国の高校生を撮り続けてきた写真家・小野啓が新作のテーマとして選んだのは、ライヴアイドル「BELLRING少女ハート」。闇の中にある光を求めて、写真家はフィルムカメラを片手にライヴハウスに通いつめ、躍動するメンバーと狂喜乱舞するファンの姿、そしてそのバックヤードを2年半の歳月をかけて写真にした。同書はライヴアイドルの世界に写真で肉迫した唯一無二のドキュメンタリーである。

儚く消えてしまうもの。それゆえに見過ごされてしまうもの。 今ここにありながら次の瞬間には過去のものとなり、同時にかすかな未来を予感させるもの。 小野啓は、そのような存在が放つ硬質な輝きをずっと見つめてきた写真家だと思う。 この本に、その核心を見た気がする。
―――― 竹内万里子(写真評論家)

NEW TEXT

  • 発行:赤々舎
  • 仕様:290×223 ㎜ / 344ページ / 上製本
  • デザイン:鈴木成一デザイン室
  • 定価:3,800円+税
  • Published in December 2013

写真家小野啓が2002年から約10年間にわたって撮影した、日本全国の高校生の肖像写真。

小野は一環して、自ら被写体を選ぶことはせず、被写体募集の呼びかけに応募してきたすべての高校生のいる土地へ赴き、彼らの存在とその場所をカメラに収めた。
この高校生たちのポートレートには、「ひとりひとり」の取り替えようのない固有性とともに、はからずも彼らが生きている場所と時代が刻み込まれている。
帯コメントは『桐島、部活やめるってよ』の小説家・朝井リョウ。
気鋭の評論家・宇野常寛による論考も収録。

全ページが、物語の表紙。 ただこちらを見ている彼らの向こうには、何百通りもの物語が広がっている。 その制服を着るまでの日々、脱いだあとのこれからの日々。 彼らの物語すべてを、小野啓だけが写し出せる。
―――― 朝井リョウ(小説家)

「小野が写した少年少女たちの「顔」たちは、みんなどこか不器用で、ナイーブで、しかしその不器用さとナイーブさに自分では気付いていない。一見、自分は図太く、ふてぶてしく生きているよ、という顔をした少年少女の小憎らしい笑顔も、小野のカメラを通すと狭く貧しい世界を我が物顔で歩いている生意気で、そして可愛らしいパフォーマンスに見えてしまう。「応募者すべてを撮影する」というルールを自ら定めている小野の作品群は、思春期の少年少女が不可避に醸し出す不格好さを切り取ることになる。自らのカメラが写してしまうものについて、小野は彼が定めたもうひとつのルール─「笑顔を写さない」から考えても極めて自覚的だと思われる。その結果、僕ら中途半端に歳をとってしまった人間たちは、その不器用さや狭さにかつての(いや、もしかしたら今の)自分の姿を発見して苛立ち、痛みを覚え、そして愛さずにはいられなくなるのだ。」
―――― 宇野常寛(評論家)

書評・インタビュー・作品掲載など

『CAPA』2013年4月号「より多くの人に届けるために 小野啓写真集作って届けるためのプロジェクト」
『PHaT PHOTO』2013年vol.75(5-6月号)「変わる!私のポートレート」 表紙・作品掲載
『日本カメラ』「PHOTO&PEOPLE 小野啓『NEW TEXT』」
『産経新聞』2013年6月13日版「高校生の「自分らしさ」に未来」
日本テレビ NEWS ZERO「ZERO human」出演 2013年6月17日
『+DESIGNING』vol.34「クラウドファンディングによる写真集を作って届けるプロジェクト」
NHK「首都圏ネットワーク」出演 2013年8月21日 「ポートレート “高校生の肖像写真”を撮り続けて」
『ユリイカ』2013年10月号「一〇〇年先の写真集 文ー小野啓」
『RÉVÉLATIONS』(フランス) 作品掲載
『知日』(中国)16号「特集 写真」 作品掲載
『アンダスタンド・メイビー』島本理生著 作品掲載
『読売新聞』2014年2月2日版 読書欄「本よみうり堂」
『みんなの図書館』「写真集『NEW TEXT』を全国の図書館へ 文ー姫野希美」
『IMA ONLINE 』レビュー「10年を費やし500人以上の高校生たちの姿を生々しく描き出した写真集 文ー桐谷麗了子」
『共同通信』2014年版「高校生の微細な変化 写真に」
『日本経済新聞』2014年2月23日版 読書欄
『artscape』レビュー「小野啓『NEW TEXT』 文ー飯沢耕太郎」
『アサヒカメラ』2014年4月号掲載「10年間撮り続けた高校生の写真集を刊行 文ータカザワケンジ」
『週刊金曜日』2014年4月4日号 書評「「青春」のコアにあふれた写真集 文ー山田航」
『Adbusters』(カナダ)2014年5/6月号 作品掲載
『THE BIG ISSUE TAIWAN』(台湾)2014年6月号 表紙・作品掲載
『SNAPPP』(台湾)no.36 表紙・作品掲載
『アサヒカメラ』2014年11月号 表紙・作品掲載
『キャリアガイダンス』vol.404 インタビュー「希望の道標」
『Girls/Boys Song』world’s end girlfriend 作品掲載
『知日』(中国)25号 作品掲載
『デザイン室』鈴木成一著 作品掲載
『SHABEL』vol.1 作品掲載

青い光

青い光

  • 発行:ビジュアルアーツ、発売:青幻舎
  • 仕様:220×170 ㎜ / 132ページ / 並製本
  • デザイン:町口覚
  • 定価:2,000円+税
  • Published in December 2006

    北海道から沖縄まで全国の「高校生」を撮った、小野啓のデビュー作。

    「写真を撮らせていただける”高校生”を募集しています。
    興味のある方はお気軽にメールでご連絡下さい。」
    フライヤーを撒き、雑誌に告知するなどの手段を使ってモデルを募集。
    応募してきた高校生達とメールのやりとりでコンタクトを取り続けた。
    「レンズの前に立つことを望む彼らと向かい合う。
    いつだって自分の存在を見つけて欲しいと願う者はどこかにいて、
    僕たちはそれを写真という手段に求めた。」
    高校生だった頃の自分がオーバーラップする、まっすぐな瞳のポートレイトから目を離せない。

    ページをめくるたびに現れる、ある種、挑戦的とも言える強い視線。
    彼らの視線は確かに、見て安らぎを感じるようなものではないが、
    その瞳の奥をじっと覗き込めば、
    そこには眩いほどの「自分」という強い光が灯っている。
    —作家・白岩 玄(『野ブタ。をプロデュース』作者)

    10代という輝きつつも不安定な時期にカメラを向け続けることで、この人の世界ができあがりつつあるように感じる。
    高校生の全身から発する「青い光」が見る者のこころに染み通ってくる。
    —飯沢耕太郎

    「自分が生きたいように自分の人生を生きる」
    生きたいことが解らない不安とあらゆることへの迷いと惑いの顔がある。
    それが素晴らしい。あらゆる可能性と失敗の可能性が同居している。
    —百々俊二

    顔、18才、17才、顔。
    何か社会との違和感を、体と顔で表している存在なのだろうか。
    とてもイイと思った。
    —上田義彦

    全国を飛び回っているようですが、どこへ行っても小野さんの強い視線は人を引きつけます。
    すばらしいドキュメントにもなっています。
    —瀬戸正人

    Review
    ベイビ—ランドの子供たち

    一見すればただの青春ドキュメントに見えるのかもしれない。だが、小野啓の撮る高校生の表情に潜むのは、カルチャ—から思想まであらゆるものに死に絶え、自分を類推するサンプルですら求めることが難しくなった平坦な地平で自ずと個を剥き出しにされた90年代以降の子供たちが、自らの正体を必死に確認しようとする姿である。

    HPで、フライヤ—で、雑誌の広告スペ—スで、地道にモデルを募集し続けた小野。応募があればメ—ルで連絡を取り合い、北は北海道から南は沖縄まで、撮られたいと願う者のいる場所ならどこへでも出向いて、二人街を歩きながら撮影場所を探したのだという。

    ポ—ズの指示や演出のない、写真を介した一時の共犯関係。その短い時間の間に、お互いの距離を探りあい、”見つけられたい”と願う者と”見つけたい”と願う者の想いがときに両者入れ替わったりしながら一枚の写真を生み出していく。そしてカメラは、一定の距離と視点を生み出す道具となることもなければ、強引に距離をつめるための言い訳になることもなく、ただ素直にその間に存在している。

    過信も盲進も許されない時代に自己を発見することを強いられた高校生たちが、名のない写真家に自ら証明を託したという事実。起伏のない広大なネットの発達に加担するデジカメ、形態カメラの罪を知りながら、それでもなおポ—トレイトの力を信じた被写体と写真家の想いが、決して目新しいはないこのテ—マの中に、ある種の欠落感情を越えた優しい写真力を生み出している。
    ―2007年3月号 STUDIO VOICE